【狂った勇者が望んだこと】の番外編、 春哉視点
もしも皆同じ学園だったばあい
「──ということでさ、春哉ご招待」
響から渡された手作り感溢れる招待状を眺める。太一といい、相変わらず2人はお祭りが好きみたいだ。
誘ってくれたことは嬉しいけれど、ここは断ることにする。
「ごめんね、響。折角だけどちょっと用事があるんだ」
「そっかー。もしかして?」
「もしかして」
「なら分かった。その代わり今度空いてる日また飯食いに行こう」
「そうだね。ありがとう」
理由を知ってる響は追及することなく話を終わらせてくれる。それが凄く有難い。
じゃあなと手を振って去る姿に僕も手を振った。クリスマスイヴだってクリスマスだって関係ない。
それはしょうがないことだけど、たまに、今日みたいに残念な気持ちになってしまう。
「ねえ、加奈子聞いた?新庄先輩がクリスマス会するんだって!招待状を貰った人しか参加出来ないとか……」
「そんなあ。新庄先輩とクリスマス……!素敵すぎる!」
赤くなった顔を抑えて楽しそうな悲鳴を上げる女子生徒と似たような反応をする女子生徒は多い。
純粋な「いいな」から「誰が貰った」に代わって「どうしたら譲ってもらえるか」と危ない雰囲気に変わっていくもんだから新庄さんの人気は凄いと思う。
響を介して時々話すようになってから、テレビ越しの有名人の人気ぶりを見て凄いと思うのに似た気持ちで新庄さんを見ていたのが、同情を混ぜての凄いに変わったのは早かった。
言動一つ一つ見逃さないとばかりに色んなところから視線が突き刺さって、あることないこと噂されている。とうに諦めたか達観したか、新庄さんは好きなようにさせて自分が楽しめるほうへ意識を向けることに集中しているようだ。
それにもまた、凄いなと思ってしまう。
きっとクリスマス会もなんだかんだと注目されるだろう。
願わくば彼女にとって楽しい会になるといい。
そう思って頭を過ぎったのは、いつも元気で明るい伏見さんだ。彼女もいるらしいから、まず間違いなく、新庄さんは大変だけど楽しくなるはずだ。
「……さ、行くか」
もし春哉が桜たちと同じ学校だとしても本編と同じく彼は自分のことをあまり話さない。
どこか傍観者の立場で距離をとっています。