投票企画)1位レオルド(以前アップしたXmasの続きみたいな感じ

【狂った勇者が望んだこと】の番外編、 神視点
投票企画で1位をとったレオルドと桜の話

もしも、Xmas!in学園②(レオル視点の続きみたいな感じ


「MaryXmas、桜」
「はあ?え、うわ……」

ドアを開けた瞬間見えた厄介な訪問客の笑顔に桜は隠すことなく口元をひきつらせる。そんな表情をみてもなんら堪えた様子のない訪問客は、くじけるどころか頭を抱える桜の横を通り抜けて部屋の中に入って行った。慌てたのは桜だ。

「いやいやいや……なに人の部屋入ってるんですかね」
「へー桜の部屋ってこんな感じなんだね。シンプル」
「散らかってるんで入るなってか、どうやって私の家を知った?それでよくもまあ人の家でそんなくつろげるな。入って5秒だぞ、5秒」
「これで散らかってるんなら俺の部屋なんかゴミだから」
「はあ……」

桜の部屋に無断で入ったレオルドは好き勝手部屋を見学したかと思うと、最終的に部屋にあったソファに寝転がって人の話もろくに聞きやしない。桜は深いため息を吐いて傍若無人なレオルドを見下ろしたが、レオルドは楽しそうにニヤニヤと笑うだけだ。
人の気も知らないで……。

「帰れ」
「帰ると思う?」
「んじゃ私がどっか行くわ」
「行かせると思う?」

レオルドになにを言っても無駄だと悟った桜が頭を切り替えて外へ出かけようとした瞬間、今の今までリラックスしていたレオルドが身体を起こして桜を捕まえた。そのまま抱き寄せられた桜はなすすべなくレオルドと一緒にソファにおちる。
小さなソファでは二人で寝転がることはかなわず、桜はレオルドの身体のうえに寝転がった状態だ。感触が固いとか思っている場合じゃないことは身に染みてよく分かっていた。

「どいてくれませんかね、レオルド先生」
「やっぱりそのプレイいいね」
「死ねよほんと……」

レオルドの鼓動とともに聞こえる声に桜はどうしたものかと頭を悩ませる。去年と同じようなやりとりに今回も結果がどうなるのか予想がついてしまう。

「俺はもう先生じゃないよ桜」
「知ってますけど先生っていう呵責をなんかもってほしいんですよね。だって卒業してまだ1年も経ってなんで」
「それでも君は俺の生徒じゃなくなった」

その声色が楽しいだけのものじゃないことに気がついて、桜は息を詰める。
去年の今頃までレオルドは桜の学校に教育実習に行っていた。なのですれ違うことは勿論、話すことは日常といっていいほどあった。それどころか人目から逃れて数学の準備室で二人だけでお茶を飲んだり、レオルドのからかいに桜が胃を痛めたり、レオルドのセクハラに桜が頭を痛めたりと……レオルド曰く楽しい時間を過ごしていた。

レオルドは生徒である桜に対してスキンシップが多かった。それは桜もすぐに気がついて、レオルドに指摘したうえ自分からもレオルドとは距離を置いた。 が、そんなことは微塵も気にしないのがレオルドという男だった。レオルドは社会の目さえ気にせず、去年のXmas、桜に言った。
『俺は君が好きだよ』 唐突な告白に面食らう桜にキスまでしたレオルドは『また来年』と笑って先ほどの告白が嘘のようにその場をあとにした。

次の日学校で会ったとき、いつも通りのセクハラあれど告白のときのような真剣な雰囲気はなく、あれは幻だったのかと桜が思ったぐらいだ。そのままレオルドの教育実習が終わり、桜も受験を終え高校を卒業し──そして大学生になって初めてのXmasで、これだ。
桜はチャイムが鳴ったとき相手を確認せずドアを開けてしまったことを後悔する。
あの時言った『また来年』は今日だ。

「あのさレオルド。私お前に興味ないんだけど」
「流石にそれは傷つくね」
「こうでも言わないと通じないだろ」
「まあそうだね」

一応1年遅れとはいえ告白の返事をすれば笑って返された。

「じゃあどうしよう?君は去年俺が先生だからアウトだって言ってた。君はもう俺の生徒じゃない」 「そもそも私はレオルドを好きでもないし」
「そもそも君は誰も好きじゃない」

レオルドの言葉に桜が身体を起こせば、緩く弧を描いた蒼い瞳が桜を映し出した。伸びてきた手が桜の頭を、頬を、顎を撫でる。
猫を撫でるような手つきはいつのまにか首筋に移り、遠くにあった桜の顔を引き寄せた。

「好いている男が、というより、そもそも誰でもどうでもいいんだろ?ただ近くにいる奴に情が移って一緒にいるだけ」
「……凄い目で見てくれてどうもありがとう?ですかね。仮にも好きな奴相手にそんな評価どうかと思いますが」
「俺は君のそういうところも好きだよ。正直言えば都合がいいし」
「ちょっ、──っ」

突然のキスに驚いて桜はレオルドの手を引っ掻いてしまうが、レオルドは気がついてさえいないようだ。呼吸を奪うキスは桜の思考まで奪っていく。
反転した視界は既に朦朧としていた。

「誰も好きでないのなら俺でもいいでしょ?」
「それ、凄く、犯罪臭がする、ってか思考が危なすぎやしませんかね」
「情をかける相手は俺だけでいい、でしょ?」
「聞いてます?」

のしかかる体重に桜が眉をひそめると、ようやくレオルドは困ったように眉を下げた。初めて届き始めた言葉にこんな状況とはいえ桜は少し感動してしまう。それぐらい、昔も話が通じなかったし今も話が通じない。

「そうだね。理想は君が俺のことを好きになって君に望まれて君と一緒になりたい。でも昔から君は俺が先生だからって袖にしたでしょ?」
「なにか誤解を生みそうな表現なのが気になるんですが」
「だったらさっさと既成事実作ってなんなら子供も作って俺のものにしようと思ったけど、君に嫌われることが間違いないから出来なかった」
「……思いとどまってくれて有難いんですけど、やっぱりさっきから犯罪臭が凄いってか、今も危ない状況ですが気がついてます?不法侵入のうえ押し倒してますからね」
「だから君が俺の生徒じゃなくなるのを待ったし、俺が真剣なのを君が思い知れるように1年も待った。君もよく言ってたでしょ?俺が欲に忠実すぎるって──でも、君の意見を尊重して1年も我慢した」

桜を見下ろしていた瞳がゆっくりとあいていた空間を埋めていく。お互いの肌を撫でる息が熱を孕み始めていて、桜の足が逃げ場を探すように動いた。その足に触れたのはレオルドの指先。つん、と悪戯するように動く指が足をのぼっていく。
ぞくりとする痺れに背中を震わせた桜を見て、レオルドが官能的な笑みを浮かべる。

「桜──君が好きだよ」

まくれあがった服からのぞいた素肌にレオルドの手が這う。熱い体温に腹の底から沸き上がった痺れはなんだろうか。 桜はこくりと喉を鳴らしてレオルドを見上げた。

「ちょ」
「いま君が俺を好きじゃなくてもいいよ。でも俺が君をずっと好きなのは変えようがない。でもだからこそ最終的に君は俺を選ぶことになる。……だったらもう諦めて俺を選んで」
「いや、いやいやいや、どんな理論ってか、人の気持ちは変わるんで。ってかお前マジでこれ犯罪だしそのまま進めたらレイプ犯だからな?」
「君がそんなの許すはずないだろ?それに、言ったでしょ。俺は君がずっと好きだって」

思いがけないレオルドの言葉にドキリとする。
そうだ。どれだけ親しかろうが、最低ラインを越えてくる奴とは付き合い方も変えるし縁だってきることがある。不法侵入をしてソファに押し倒してくるなんて行為は最低ラインどころか普通にアウトだ。
それをしなかったのは、しないのは。

「いや、だから……今は盛り上がってるだけで変わるだろうし、ああ駄目だ。お前に話は通じないんだった。やべえ勝てる気がしない」
「そうだね。桜は本当に話が通じないからね。俺はずっと言ってるでしょ?君が好きでそれはずっと変わらないって──よかったよ。1年の証明でも桜が信じなさそうな気がしたから手は打っておいたんだ」
「え」

頭が混乱し始めてきた桜に追い打ちをかけるようにレオルドがポケットから1枚の紙を取り出す。なにかの申請書のようだった。既に半分記入済で、桜の目が正常ならば、婚姻届けと上のほうに書いてある。

「は?」
「結婚しよ?さっきも言ったけど俺君から離れるつもりないし、だったらもう結婚しとけばいいよね?」
「え。いや待て。ちょっと、待て」

桜を見下ろすレオルドは今まで見た中で一番爽やかな笑顔をしていた。
桜はもう、言葉もない。

「さあどうしよう?君はもう俺の生徒じゃない。君は結局誰にも興味がない。でも俺は君が好きで離れるつもりはない。君は触れることは許してくれる。君は俺の気持ちの移ろいに恐れを持っているみたいだけど、俺は君を手に入れたら手放すつもりは微塵もない。その証拠に君の考えを尊重して1年も待った。ああそれと結婚届は明日にでも一緒に出しに行こうね。……さあどうする?なんでもいいよ言ってみて?ぜんぶ受け止めて否定してあげる。君がどんなに否定しても信じなくても俺に興味がなくても、俺は君が好きだよ」

強烈過ぎる告白をしたレオルドはこの部屋の主のように躊躇なく服を脱ぎ、部屋に放り捨てる。そして口元をわななかせ顔を赤くし混乱状態の桜に、この瞬間まで我慢した恋情を言葉にのせた。


「諦めて、桜」


番外編終了!

皆さま、アンケートにご協力ありがとうございました!とっても楽しかったです!
レオルド1位のため番外編内容のエロさも1位になるはずが、ヤバさで1位になりました。レオルドはどの世界でもレオルドでした。


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